皆さんピンクリボンをご存じですか? ピンクリボンは、乳がんの早期発見、早期診断、早期治療の重要性を訴えるために、全世界共通で使われているシンボ ルマークです。毎年秋に、このピンクリボンを掲げた「ピンクリボンキャンペーン」が約10人に1人は乳がんにかかるといわれている欧米を中心に全世界で自 発的に開催されてきました。日本でも同時に公費で行われている乳がん・子宮がん検診のあり方を見直そうとする声が大きくなっています。女性がんの罹患率の トップは、日本でも乳がんです。ただ、20代と30代の若年女性に限って言えば子宮がんが上位にきます。子宮がん検診の見直し案では、若年に多い子宮頸が んは、現行の30歳以上を改め20歳以上とし、また、統計上検診の有用性が認められない子宮体がん検診を、公費検診から除外するというものです。
ところで、子宮頸がんと子宮体がんは、発生部位(子宮の入り口に近い部分を頸部、奥の部分を体部)の違いだけでなく、組織上も全く異なるがんで、一般に 「頸がん」は若年からの発症が多く、「体がん」は閉経後の発症が多いとされ、発症頻度も「頸がん」が80%に対し「体がん」は20%程度といわれていまし た。子宮体がん検診を廃止する根拠は、検診でがんが見つかった方と、性器出血などの自覚症状がでて受診して見つかった方の間に、統計上では治癒率など有意 差を認めないためとされています。
実際に産婦人科臨床に携わる立場から、この判断は大きな問題点を抱えていると思います。まず第一の理由は、厚生労働省の最近の報告によると頸がんと体が んの患者数がほぼ同数に近づいていること。米国では、体がん患者数は頸がん患者数を上回り、子宮がん全体の約7割が体がんです。
第二の理由は、近年の食生活の変化(欧米化)にともなって子宮体がんの発症年齢の若年化が進み、以前にはほとんど見られなかった30代から40代の体がんが確実に増加していること。
そして何より、実際に公費検診で子宮体がんがみつかるという事実を無視するわけにはいきません。
各国のデータや国内の統計を考慮して今後の子宮がん検診のあり方を考えれば、
(1) 子宮頸がん検診は、20歳から推奨し、 (2) 子宮体がん検診は、40歳前後から推奨する。
また、乳がんや大腸がんを含めて食生活の欧米化(高脂肪・低食物繊維など)によるがんの増加原因を配慮すれば、「医食同源」の言葉にもあるように、検診以前に食生活を含め私たちの日常に目を向け、広い意味での予防医学を啓蒙していくことが大切です。