生理の周期にともなって心身の調子が大きく変わる方がおられるようです。例えば、生理前になるとイライラしたり、精神的に落ち込んだり、下腹部痛を感じ たり、様々な症状を呈する方がいますが、これら生理前におこる症状を包括して月経前緊張症(PMS)と呼びます。PMSの大きな特徴は、イライラや鬱(う つ)などの精神症状をともなうケースが多く、生理が始まると症状が急に軽くなるか、あるいは全く無くなってしまいます。
これらは、生理周期にともなう女性ホルモンの変化が原因です。女性ホルモンには卵胞ホルモンと黄体ホルモンがあって、排卵後から血液中の黄体ホルモンが 上昇し、この時期は黄体期と呼ばれています。黄体ホルモンの働きで細胞内液の貯留(浮腫)がおこることがPMSの直接の大きな要因と考えられます。生理が 始まる時には、血液中の黄体ホルモン値が急速に低下するためPMSにともなう症状も突然消失します。
試験の成績や運動能力なども生理が終わった時期が良いようです。実際、運動選手が世界記録を出しやすい時期も生理終了後が多いという報告もあるようです。
ではPMSの対処法について考えてみましょう。食生活では、浮腫を防止するために高脂肪や塩分の摂取を控える方が良いでしょう。ただ、PMSに対する西 洋医学的なアプローチは確立していません。経験上PMSに効果的な治療法は、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)や五苓散(ごれいさん)と呼ばれる漢方薬 です。特に桃核承気湯は著効する事が多いと感じます。通常は実証の方(一般にがっちりタイプ)に用いる駆瘀血剤で、血流改善作用があります。ただ、虚症 (ひ弱な体質の方)の方が用いるとひどい下痢をする場合があるので注意が必要です。例えばツムラの方剤の場合通常使用量は1日3包ですが、虚症の方では1 包とか半包とか、その人の応じた量を使用します。少量から始めて、やや便が柔らかい程度が適量です。開始の時期は、生理周期の中でその人がPMS症状を感 じる予定の日から約1週間前に飲み始めて、生理が始まり症状がなくなると休止します。
また、リラックス効果のあるラベンダーやローマンカモミール、ホルモン調節作用をもつゼラニウムやクラリセージなどの植物精油を用いたアロマセラピーやハーブも有効な方もいます。