vol. 7  妊娠と食生活

妊娠・出産は女性にとって、またご主人やご両親などご家族の方々にとっても人生の大きなイベントです。妊娠がわかると、出産への不安や産後の生活など、 いろんな思いをはせることでしょう。以前勤務していた済生会奈良病院の母親学級で、「どんなお子さんに育ってほしいですか」と質問すると、「思いやりのあ る子」とか「人に迷惑をかけない子」、「五体満足ならばいいです」などたくさんの声を聞きました。そんな中で案外意識が低いのは、食生活への配慮です。食 をとおして赤ちゃんに必要な栄養をとることはもちろん、赤ちゃんに有害なものを摂取していることも忘れてはいけません。私たち自身には影響のない量の物質 でも、胎児期には問題となるケースがあります。今回は妊娠と食について考えてみましょう。

妊娠中に不足しやすい栄養素として鉄分やカルシウム、また塩分のとりすぎや太りすぎに注意しましょう、これらはよく聞きますね。ここでは、別の角度から 食を考えます。妊娠中(授乳中も含め)の食生活でまず配慮していただきたいのは、現代病といえるアレルギー体質(アトピー体質)との関連です。胎児や新生 児は免疫学的に未熟で、この時期にアレルギーの原因になりやすい物質(例えば、卵や牛乳などの異種タンパクなど)を多くとりすぎるとアトピー体質になりや すいといわれています。また、さまざまな化学物質(残留農薬や防腐剤など)が微量でアレルギーを助長する危険性を持っています。無農薬(低農薬)、無添加 の食材を心がけることは大切です。

もうひとつの提言は、多動障害(ADHD)の子どもたちが増えていますが、その原因の一つとも考えられている環境ホルモンの問題です。ダイオキシンや PCBなど環境ホルモンは脂溶性で、日本人の場合約80%は魚介類から摂取しています。よく肉よりも魚がいいと考えられていますが、魚でも出世魚のように 長寿の大型魚で脂肪が多い部分はひかえる方がいいでしょう。また、緑黄色野菜(葉緑素)や食物繊維は残留農薬や環境ホルモンの排出を促す働きがあります。

第二次大戦後日本人の食生活は大きく変わりましたが、過去何世紀にもわたって続いてきた日本食は私たちの遺伝子に記憶され、地の食材には解毒作用もあります。煮物、薫物が多い本来の日本食は私たち日本人にとって大切な健康文化といえます。

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