脂質異常症の薬物療法


① コレステロール合成阻害薬 (HMG-CoA還元酵素阻害薬) : スタチン系薬物

コレステロールの約80%は肝臓で合成されます。
アセチルCoAを出発点にさまざまな工程を経てコレステロールは合成されます。
この工程の一つに、HMG-CoAがHMG-CoA還元酵素によってメバロン酸へと変換される工程があります。そこで、HMG-CoA還元酵素を阻害すれば、メバロン酸の産生がストップし、コレステロールの合成も阻害されます。

このような作用機序でコレステロール値を下げる薬にプラバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチンなどのコレステロール合成阻害薬:スタチン系薬物があります。
コレステロール合成阻害薬は血中のLDLコレステロールを減少させます。


② コレステロール異化促進薬

肝臓で合成されたコレステロールは体の各組織へ運ばれます。
ただし、一部は胆汁酸へと変換され排泄されます。

コレステロールから胆汁酸への変換を促進する薬としてプロブコールがあります。
また、プロブコールには抗酸化作用があり、LDLコレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化を予防します。
黄色腫をともなう高コレステロール血症に向きます。

LDLコレステロールとともに、HDLコレステロールも低下します。HDLコレステロールの減少は、体に溜まった過剰なコレステロールを回収するなど、HDLコレステロールが活発に働いた結果ではないかと考えられています。


③ コレステロール吸収阻害薬

コレステロールは胆汁酸として消化管に排泄されますが、排泄された胆汁酸の一部は再び吸収されます。

消化管で、胆汁酸の再吸収を阻害する薬にコレスチラミン、コレスチラミドがあります。コレスチラミン、コレスチラミドは陰イオン交換樹脂で、胆汁酸を吸着させることで吸収を防ぎます。


④ トリグリセリド(TG) 合成阻害薬 : フィブラート系薬物

トリグリセリド合成阻害薬はトリグリセリドの加水分解を促進することで、血中トリグリセリド濃度を減少させます。

このような薬にクロフィブラート、ベザフィブラートがあります。


⑤ リポタンパクリパーゼ(LPL) 活性化薬

リポタンパクリパーゼ(LPL) が活性化されると、トリグリセリド(TG) の加水分解が促進され、血中トリグリセリド濃度が減少します。このような働きをする薬にデキストラン硫酸エステルナトリウムがあります。


⑥ EPA製剤

魚(イワシ)のエイコサペントエン酸を抽出して、不純物を取り除いたのがEPA製剤です。血液中のEPAを補うことで、血栓症を予防します。

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