その12 新規開業に思う

2006年3月3日、開業。春を待つ野の花や虫たちの様に、今その時を待ちわびつつ、開業に向けて最後の残務に奔走している毎日が続いている。3月3日はいうまでもなくお雛祭りであり、婦人科の起業にはうってつけの日である。また、2006年の3月3日は大安であり、3日月にあたる。私は3日月が大好きで、これから膨らんでいく月が、何か夢を具象化してゆく象徴のように感じる。

中野司朗レディースクリニックについて少し追記しておきたい。前回、クリニックの理念として「全人的医療を志すクリニック」を紹介させていただいたが、今回は4つの診療理念についてお話しさせていただく。

① 医師として「スペシャル ジェネラリスト」を志す
医師は大きく分けて、気軽に幅広く相談できる家庭医(ジェネラリスト)と、細分化された特殊治療を行う専門医(スペシャリスト)があり、私は、12年余りの済生会奈良病院時代の臨床経験と、気軽に相談できる家庭医のスタンスで、専門的な判断のできる「スペシャル ジェネラリスト」を志したい。

② 「セカンドオピニオン」を提供できる医療の質
治療方針に迷われている患者さんに、「スペシャル ジェネラリスト」として気軽に婦人科領域の「セカンドオピニオン」を相談できる場の提供と、医療の質の維持である。

③ 予防医学の啓蒙
日本の年間医療費は約30兆円超で、2025年には50兆円、2050年には75兆円に達すると予測され、日本の健康保険制度は大きな危機にさらされている。そこで、生活習慣や予防医学への取り組みが非常に重要で、食事療法/栄養療法や運動療法の啓蒙、また早期発見のために真の検診のあり方を追求し、実行すること。婦人科領域の子宮がん/乳がん/卵巣がん検診はもとより、要介護状態の主要な原因、骨粗しょう症/虚血性疾患の検診として骨密度測定や血管年齢ドックのあり方を根本的に考え直し、そして実行する。

④ 統合医療の推奨
大自然の力で創造された私たちが、傷ついた生き物を「治す」と考えること自体に傲慢さがあり、私たち一人一人が持っている偉大な自然の力が治すのであって、医療はほんの少し手を貸すにすぎない。私たちは、現代医療だけではなく、自然療法や伝統医療に眼をむけ、伝統医療のひとつ漢方治療を導入し、さらにハーブやアロマセラピーなどの植物療法(フィトセラピー)を容認する。

たいそうな理念を掲げて、はたしてどれだけのことが出来るのやら。はたまたどれだけの患者さんや新しいスタッフたちに、想いが伝わるのやら。これから不安だらけの船出である。いずれにしろ、これからの残された人生、医師として患者さんに向き合うことに後戻りはできない。ここで共感された方々に、クリニックでお会いしたときに失望されないよう、一歩ずつ着実に階段を上ってゆきたい。

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