Vol.118 2017.10.02 貧血治療の問題点

高齢者と若年者の貧血の違いだるそうな女性
貧血は、検査センターによって基準値が異なりますが、概ねHb(ヘモグロビン)の数値が12(g/dl)以下で貧血と診断されます。
ただ、年齢によってHbの正常値は異なります。

例えば、Hbが11(g/dl)の方を考えてみます。
高齢者の場合、赤血球を作る骨髄の老化によって赤血球の生産力がおちるため、11(g/dl)は正常です。
しかし若年者では貧血で、女性の場合大半は生理による鉄欠乏、つまり材料不足です。
疲れやすい・朝がつらい・頭痛・めまい・肌荒れ・爪が割れやすいなどの症状がでます。
同じ血液データでも、治療が必要な方と不要な方がいます。
高齢者を見慣れた多くの医師が、若年者の鉄欠乏性貧血を見過ごしがちです。

貧血治療の注意点
貧血の原因が生理の場合、治療によって一時的に貧血が改善しても、継続的に治療しないと直ぐに
元の状態に戻ってしまいます。「鉄剤は摂り過ぎるとよくない」という医師がいますが、生理が原因
の場合、この指導は間違いです。

鉄には、ヘム鉄(レバーなどの鉄)と非ヘム鉄(ホウレンソウなどの鉄)があります。
病院で処方される鉄剤は、非ヘム鉄です。非ヘム鉄は、吸収される際に酸化反応が起こるために、
胃の不快感や便秘・下痢などの胃腸症状を生じる方がいます。
この予防として、鉄剤とビタミンCを同時に処方します。
また、ヘム鉄のサプリメントでは胃腸症状はおこりませんが、大半の用量が鉄剤(50~100mg)
の5~10分の1に設定されています。

胃腸症状をさけるため、注射の鉄剤を使用する場合があります。
ただし、注射での鉄剤は緊急時にとどめるべきです。
食事から摂った鉄は、小腸で吸収され、小腸上皮内に貯蔵鉄(フェリチン)として蓄えられます。
そして鉄輸送タンパク(トランスフェリン)と結合して血液中に運ばれ、各組織で使用されます。
注射で入れた鉄はトランスフェリンと結合していないため、肝臓などにヘモジデリンとして沈着し、
多量になると肝障害を起こす場合があります。
これらは、医学の教科書に記載されているのですが、案外知らない医師も多いようです。

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