Vol.88 2015.04.06 サプリメントの落とし穴

βカロチンとガン
 アイスランドにおける、βカロチンを用いた大規模治験計画を紹介します。
約5万人規模の喫煙者の協力のもと、ある種のβカロチンを内服群と非内服群に分けて5年以上に及ぶ長期フォローアップスタディを行いました。βカロチンが持つ抗酸化作用の有用性を、肺ガン罹患率で証明しようとした画期的な治験計画です。

 ところが、その結果は当初の予測を見事に裏切りました。すなわち「βカロチンを飲んだ方のほうが、飲まない方よりも肺ガンになりやすい」という結果が出てしまったのです。試験管内の実験では、βカロチンには抗酸化作用があり、抗ガン作用を持つことに疑いの余地はありません。ではなぜこのような全く予期せぬ結果になってしまったのでしょうか。

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 βカロチンには約200もの種類があります。日常で私たちは、自然界の食物から多種類のβカロチンをバランス良く摂取しています。ところが今回紹介した治験計画では、ある種のβカロチンだけを多く摂取したために全体のバランスが崩れ、本来人が生まれ持っている自然治癒力を弱めてしまったのです。ここにサプリメントの落とし穴があります。

現在、サプリメント研究の先進国においても、その効果には賛否両論がありいまだに結論に至っていません。

 食とサプリメント
 一方で、現在の食文化は美味しさやボリュームなど経済的側面が強く、旬や栄養バランスなどが二の次にされているように感じます。見せかけのキャッチフレーズに惑わされず、ピンポイントで不足を補い、また全体のバランスをとる手段として、サプリメントの在り方を真摯に考えることが大切です。

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