昔々、ドイツの小さな村に貧しい母娘が暮らしていました。少女の名はリスベス。
ある日、リスベスはベッドでふせる病弱な母をなぐさめようと
野原へサクラソウを摘みにでかけました。
野原には可愛いサクラソウがいっぱい咲いています。
「なんてステキなんでしょう!かあさんも喜ぶわ」
リスベスが夢中で花を摘んでいると、
花影から小さな妖精があらわれてこう話しかけました。
「あなたを待っていたわ、リスベス」
母をおもうやさしいリスベスの声がきこえ、少女を待っていたというのです。
そして妖精はこんな不思議なことも教えてくれました。
「サクラソウの咲く道を辿って行くと白いお城があるの。
門の鍵穴にサクラソウを差し入れると扉はひらくわ。さあ、お行きなさい」
リスベスが妖精に教えられたサクラソウの道を歩いていくと、
白いお城が見えてきました。
鍵穴にサクラソウを入れると静かに扉は開き、
そこには眩いばかりの宝物が……。
目をまるくするリスベスのポケットに、妖精たちが宝物をつめこんでくれました。
リスベスは喜んで家路をいそぎ、母にこの不思議なお話を聞かせました。
ポケットからとりだした宝物の美しい輝きを浴びると、
母の頬はみるみる明るくなり、病も治ってしまいました。
幸せな春がおとずれ、ふたりは仲良く暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。