Vol.183 2023.03.06 バスが来ましたよ

30代で進行性の目の難病と診断され、しだいに視力を失い全盲となった和歌山市職員の山崎浩敬さんの実話をもとに絵本化されました。地元の小学生たちの助けをかりながら続けたバス通勤。「バスが来ましたよ」と小さな声からはじまった、小さな親切のリレーは代々の子ども達へと引き継がれ、退職までの10年以上にわたり続きました。

もう仕事を辞めてしまおうか
仕事もこれから活躍できるという時に目が見えなくなってしまった山崎さんは
絶望し気持ちが荒れていた時期もありました。
それでも白杖を使う練習をはじめ、1、2年の家族の付き添い後はひとりでバス通勤をはじめました。
これまで気づかなかった道の溝、車の騒音、不安がいっぱいの通勤は到着する頃にはへとへとになり、仕事を辞めてしまおうかと思った時もあったそうです。

はじまりは女の子の声
ある朝、バス停で待っていると「おはようございます」と小さな可愛い声がきこえてきました。
「バスが来ましたよ」
同じバスを利用して通学する小学生の少女が山崎さんに声をかけ、
腰のあたりに手を添えて乗降口へと案内し、おしあげてくれたのです。
山崎さんはどれほど驚き、そして安心できたことでしょう。

その日から2人の交流がはじまりました。
女の子はバスの中で学校や家族と出かけたことを話してくれました。
あれほど嫌だった通勤時間が、気づけば毎朝のしあわせな時間へと変っていました。

小さな手のバトン
やがて少女は卒業しますが、それを見ていた下級生たちが見よう見まねで手助けをし、
ちいさな手の温もりのリレーは引き継がれて行きました。
誰かに「そうしなさい」と教えられたのではなく、子ども達自身で続けていったところがいいですね。
バスのなかも、男の子が席をゆずってくれたり、段差を教えてくれる人がいたり、変わって行ったとききます。

山崎さんは退職する春、小学校にメッセージを送られました。
皆さんの先輩が始めてくれた小さな親切のおかげで、目が見えなくなっても仕事を続けることができました。街の中で困っているお年寄りや障害のある人を見つけた時はこの小さな親切を思い出して、助けてあげて下さい。本当にありがとうございました。

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