Vol.164 2021.08.02 江戸の“わきまえない女” 浪速のスーパーヒロイン『奴の小万(やっこのこまん)』

089001_b (1)

せっかくこの世に生まれたからには、くわっと熱くなる思いがしてみたい

型破りな豪商の娘
小万は大阪屈指の豪商『木津屋』の娘で本名は雪といいます。虚弱な兄とは対照的に幼い頃より活発で、読み書きに優れ、香や箏、書画もたしなむ一方で、武芸が好きで町道場で柔も習い、しかも強かった!
年頃になると身の丈はなんと五尺七寸(173㎝)、弱い者を助ける侠気あふれるキャラで、顔に墨をぬりその上からおしろいを塗った奇妙な化粧で町を闊歩したとも伝わり、自由奔放な振舞でも有名となります。

口縄坂で悪党を投げ飛ばす
雪16歳の時のこと。天王寺参りで口縄坂を歩いていると、女性ばかりを狙う手口で知られた二人組のスリが左右から襲いかかってきました。雪は得意の柔で悪党を次々に投げ飛ばし、これを見ていた人々は大喝采。この武勇伝に尾ひれがついて、瞬くまに大坂中に広がり大評判になりました。お雪の独特のファッションを真似する若い女の子も現れる人気ぶりでした。

口縄坂2 口縄坂1
大阪市天王寺区にある口縄坂 小万が男たちを投げ飛ばしたのはこの辺り?

人形浄瑠璃や歌舞伎に女侠客「小万」が登場
この事件をきっかけに雪をモデルにした「奴の小万」が登場したのは1748年、道頓堀の豊竹座で初演された人形浄瑠璃「容競出入湊(すがたくらべでいりのみなと)でした。悪党をたたきのめす痛快な物語は大当たりし、続いて歌舞伎でも上演されるようになると、「奴の小万」は江戸でもその名を知られる人気者となりました。しかし、雪の実像とは離れた小万の虚像が独り歩きを始めることになります。

yakko-5 yakko-3 utagawakuniyoshi
   

家督(結婚)を継がず尼になる
その後、京都で文筆の才能を活かし(秘書のような仕事)公家に仕えましたが、兄の急死で大坂へ呼び戻されます。当時、女性が店の主人となる事は許されておらず、家督問題が起こると婿取りを拒み、家を飛び出したと伝えられます。
がんぐろ

後に出家して三好正慶尼(みよししょうけいに)となり、文化人と交流しながら生涯我が道を生きたと言われ、1802年に関西を訪れた曲亭馬琴は尼になった小万に会い、知的な雰囲気があり、はっきりと意見をいう毅然とした女性だったと日記に綴っています。

私らしく生きるだけ!わきまえない女は進化中!
教養もあり、侠気もある。そして自分らしく生きる事を貫いた小万は、200年以上たった現在でも人気があります。自由でワクワクする物語は、落語や講談で新たな姿で描かれ、“わきまえない女”は令和の今も進化を続けています。

参考:小説「奴の小万と呼ばれた女」(松井今朝子著)

Copyright © 2024 NAKANO SHIRO LADIES CLINIC ,all rights reserved.
〒631-0001 奈良県奈良市北登美ヶ丘5-2-1 / TEL:0742-51-0101 FAX:0742-51-0770