慢性便秘薬と健康食品
慢性便秘に悩まれている女性は大変多くおられます。2018年のある調査によると、OTC医薬品(薬局で購入できる医薬品)の便秘薬市場は約150億円です。もし、保険診療3割負担の方が病院や診療所で便秘薬を処方してもらえば、約100億円の節約となります。また、健康食品を含めたインターネット市場も約100億円規模です。
慢性便秘症診療ガイドライン(2017)
同ガイドラインで慢性便秘症の治療においてエビデンスレベルAと評価されているのは、浸透圧性下剤(例:酸化マグネシウム)と上皮機能変容薬ですが、後者は妊婦への投与は禁忌です。
米国消化器学会が定める便秘診療ガイドライン
生活習慣指導と浸透圧性下剤投与を行い、効果が不十分であった場合に刺激性下剤を投与するべきと考えられています。しかし、刺激性下剤は長期連用により耐性が出現し難治性便秘になることがあり注意が必要です。短期投与では虚血性大腸炎の発症リスクが報告されています。「今後、刺激性下剤の安全性については投与期間や投与量のさらなる検討が望まれる」等の記載があります。
便秘治療をうたった健康食品には多くの商品に刺激性下剤の成分が入っているのが実態で、令和3年の東京都健康食品試買調査においてもインターネット等の通信販売で購入した商品では80品目中78品目に不適正な表示・広告がみられました。
慢性便秘症の治療
慢性便秘症診療ガイドラインに沿った治療法は、まず浸透圧性下剤の投与。ただし、高齢の方には定期的な血中マグネシウム濃度の測定が推奨されます。浸透圧性下剤の効果が少ない方には、新しい便秘治療薬である胆汁酸トランスポーター阻害薬や上皮機能変容薬、短期間投与として刺激性便秘薬などが推奨されます。