Vol.117 2017.09.04 乳がん検診の問題点

乳がんの疫学
乳がんは日本人女性の発がん第1位で、約12人に1人が罹患し、
年間発病者は約9万人、死亡者は1万3500人を超えています。                 DG150
乳がんは30歳からリスクが増加し、40代から最も多発し、
その後もリスクの減少はほとんどありません。

マンモ検診の問題点
マンモグラフィーはエックス線による画像診断で、乳がんの微細石灰化を
みつけることができますが、検診精度の問題点も指摘されています。

厚生労働省研究班(主任研究者:東北大学教授 大内憲明)は、「1989~2000年、宮城県でマンモグラフィーと視触診の併用検診を受けた延べ11万2000人の追跡調査の結果、40歳代では3割近い見落としの可能性がある」と報告しています。

また、千葉県民保健予防財団(橋本秀行診療部長ら)は、乳がん症例694例のマンモグラフィーと乳腺エコーの乳がん検出率を比較検討した結果、40歳代ではマンモグラフィー76.5%、乳腺エコー87.5%(50歳以上は両方ともに86%と同率)で、マンモグラフィーで発見できない5~10mmの浸潤がんを発見するために、乳腺エコーの有用性について述べています。

今後の乳がん検診のあり方
上述の理由から、50歳以下の方の乳がん検診にはマンモグラフィーだけでなく乳腺エコー検査が望まれます。
実際、千葉県では行政の理解を得て、乳がん検診の実施年齢は30歳から毎年1回、実施内容は問診とマンモグラフィーだけでなく乳腺エコーを用いた乳がん検診を推奨しています。
一方、奈良市の乳がん検診では、今年から視触診が廃止され、マンモグラフィーのみの検診で、2年毎の実施となっています。また、国から支給されている検診予算の使い道も不透明です。

検診のあり方と税金の費用対効果、どちらに比重を置くのか国民の意識が問われる大切な課題です。

 

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