Vol.176 2022.08.01 子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)

予防ワクチン定期接種についての経緯
2013年4月1日、厚生労働省は予防接種法の改正によって小学6年~高校1年の女子は原則無料とする、子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)定期接種を実施しました。23974000_s
その2か月後2013年6月に積極的な接種勧奨を差し控えることを通知しています。理由は、定期接種化以前の13年3月末までに約328万人が接種したと推計される接種者に、全身の激しい痛みや痺れ、意識障害、記憶障害、運動障害、てんかんのような発作等の重篤な副作用報告が360件前後あったためです。毎年の重篤な副作用発症者は、およそ50人と推定されます。

海外エビデンスによるワクチンの効果報告
今年から、新たにHPVワクチンの定期接種が積極的に推奨されました。
10~30歳の女性を対象に行われたスウェーデンの研究では、4価HPVワクチンの接種が子宮頸がんのリスク低減につながることが報告され、さらに興味深いことに、17歳より前にワクチンを接種することでリスクが88%も減少することが分かりました。

もう1つ、デンマークの研究でも20歳より前のHPVワクチン接種で子宮頸がんの予防に高い効果が認められ、特に16歳以下での接種によって86%もリスクを減少できることが報告されています。一方20歳以上の接種では、子宮頸がんの予防効果はほとんど期待できないという結果も報告されています。性行為経験の有無が影響していると推測されます。

任意で9価HPVワクチンが接種可能に
現在、日本での定期接種(公費助成あり)は4価ワクチンのみが対象ですが、任意(自費)で9種類のHPVをカバーできる9価HPVワクチンが接種可能になりました。4価ワクチンのHVPカバー率は65.4%であるのに対し、9価ワクチンでは88.2%と大幅に上昇することが推測されています。

HPVワクチン接種の最大の課題は、重篤な副作用(学習障害・記憶障害など)が生じた方を診療・治療する施設が全国的にほとんど整備されていない点です。メリットとデメリットをしっかり考慮して接種するかどうか決めましょう。

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