Vol.163 2021.07.05 胎盤関連産科合併症と妊娠中の注意点

胎盤関連産科合併症―Placenta-mediated pregnancy complications(PMPC)という言葉が一般に知られるようになりました。

●PMPCとは                                             image
妊娠高血圧腎症
常位胎盤早期剥離
SGA:妊娠週数に比べて胎児が小さい
早産
などの複数の妊娠中の合併症の総称です。

特徴は
1.反復性が高い
2.相互に発症リスクとなる
3.世代間での発症リスクがある
4.母体の心血管疾患発症のリスク因子
5.出生時の将来の生活習慣病の発症リスクを高める、などです。

PMPCの主体は、胎盤における血管内皮障害と言われています。妊娠初期に胎盤の血管形成異常が発生すると、胎盤の血流が悪くなったり酸化ストレスが生じたりします。その結果血管内皮障害が引き起こされ、妊娠後半にPMPCを発症すると考えられています。

発症後の有効な治療がなく予防が大切
一度発症すると、有効な治療手段がないため、予防が世界的に有用とされています。
私たちにできる予防手段は腸内細菌叢を整える事です。
ω-6脂肪酸(リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸)やω-3脂肪酸(α-リノレン酸、EPA、DHA)など多価不飽和脂肪酸の摂取、葉酸とマルチビタミンの摂取などです。

腸内細菌叢を整える手段としては乳酸菌など善玉菌の摂取ですが、これらをプロバイオティクスと呼びます。最近では、乳酸菌発酵エキスの摂取が有効との知見もあります。

妊娠前・期間中のサプリメントは有効
多価不飽和脂肪酸の摂取や葉酸とマルチビタミンの摂取は、サプリメントの使用が有効です。多価不飽和脂肪酸は酸化しやすいため、取り扱いには注意が必要です。葉酸を含むマルチビタミンサプリの使用は、妊娠の1か月以上前から開始し、妊娠期間中を通しての摂取が推奨されます。

 

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