Vol.158 2021.02.01子宮頸がん予防(HPV)ワクチンの考察

子宮頸がん予防ワクチン取り組みの経緯

2013年4月1日、厚生労働省は予防接種法の改正によって小学6年~高校1年の女子は原則無料とする、子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)定期接種を実施しました。女子高生イメージ
その2か月後2013年6月に積極的な接種勧奨を差し控えることを通知しています。理由は、定期接種化以前の13年3月末までに約328万人が接種したと推計される接種者に、全身の激しい痛みや痺れ、意識障害、記憶障害、運動障害、てんかんのような発作等の重篤な副作用報告が360件前後あったためです。

子宮頸がん死亡者数は約2,800人でここ10年は大きな変動はありません。2800人の60%が助かると推定すれば年間で最大1,680人の命が助かります。そして重篤な副作用の出現率が0.0001人と推定すると、毎年の重篤な副作用発症者(推奨接種対象が10代)は少なくとも50人以上と推定されます。(ただし、子宮頸がんは定期検診を受ければほぼ100%防ぐことがでます。)

副作用
一方、ワクチンによる副作用救済制度での認定例のうち、障害と死亡という深刻なものに絞り込んで認定頻度を比較すると、HPVワクチンは、主な他のワクチンの平均値より約10倍高くなっています。すなわち、HPVワクチンの発売開始から現在までにPMDAの医薬品副作用被害救済制度における障害・死亡の認定者は約400人で、頻度は被接種者100万人あたり10.88人で、主な他のワクチンの平成17年から25年までの予防接種健康被害救済制度における障害・死亡の認定頻度の平均値は100万人あたり1.23人です。

今後のHPVワクチン接種に向けて最大の課題は、重篤な副作用(学習障害・記憶障害など)が生じた方を診療・治療する施設が全国的にほとんど整備されていない点だと思います。

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