排卵誘発剤や環境ホルモンの増加にともない、卵巣がんは近年増加傾向にあります。卵巣がんは進行が早く、初期には自覚症状もないため、気づいた時には進行 がんとなっていることも少なくありません。
実際、卵巣がんの死亡者数は子宮がん(子宮頸がん+子宮体がん)の死亡者数よりも多く、年間約5,000人に達します。
発病は、10~20代に多いタイプもありますが、50代から急増します。
「閉経したから卵巣は大丈夫」と誤解している方が多くおられますので、正しい知識の普及が大切です。
また、子宮内膜症性卵巣嚢腫(チョコレート嚢腫)が卵巣がんの母体になることがわかってきました。
卵巣腫瘍がみつかった時、最初の問題点はその腫瘍が良性か悪性か の見極めです。良性・悪性の診断を念頭に卵巣腫瘍を考える場合、卵巣には下記の2つの特徴があります。
普通の細胞は、いくら培養しても元の組織にしかなりません。(例えば皮膚の細胞を培養すると皮膚になるが、骨にはならない)
ところが卵巣には卵細胞が あり、卵細胞は精子と受精することで分裂を始めやがて胎児となります。すなわち、卵細胞は普通の細胞と異なり、将来いろいろな組織へと分化していく可能性 を持っているのです。(普通の細胞はすでに分化を終えている)
一般に1臓器にできる腫瘍の数はごく限られていますが(例えば子宮にできる腫瘍は、子宮筋腫/子宮がん/子宮肉腫など数種類)、卵巣腫瘍は良性から悪性ま で約20種類以上存在します。この多様性が卵巣腫瘍の第1の特徴です。
腫瘍の確定診断は、腫瘍組織の一部を試験的に切り取り顕微鏡検査で良性か悪性かを判断します。例えば、胃の病変の検査をする場合、口から内視鏡を挿入し て胃の内部を画像診断すると共に、異常部分の組織を切り取り顕微鏡で精査します。(いわゆる胃カメラです) ところが卵巣は、体外と直接つながっていない ため組織検査ができません。それゆえ卵巣腫瘍の確定診断は、手術後に摘出標本から直接組織を切り取って検査することで確定します。つまり手術前には良性か 悪性かの確実な診断はつかないのです。ただし、画像診断や腫瘍マーカーなどからある程度の推定診断は可能です。
自覚症状
- 初期には無症状
- 下腹部痛
- 下腹部腫瘤
- 時に生理不順など
検査方法
- エコー検査(超音波検査)
最も手軽に行えて、最も有効なスクリーニング検査。初期の卵巣がんでも検索可能。 - MRI検査
- CT検査
- 腫瘍マーカー(血液検査)
手軽に行えるが、初期の卵巣がんでは検出できません。
治療法について
1.手術療法
最近、腹腔鏡下手術が流行していますが、卵巣腫瘍の確定診断は術後診断であるため、術前の画像診断で良性の可能性が非常に高い場合以外は行うべきではありません。
(なぜなら、腹腔内で腫瘍を潰すと腫瘍細胞を腹腔内にばらまくことになるため)
卵巣嚢腫核出術
卵巣切除術
卵巣がん根治手術(子宮摘出術+付属器切除術+リンパ節郭清術+大網切除術)
手術の切除範囲は、術前の画像診断や術中の迅速組織診を参考に決定されます。
2.化学療法
卵巣がんは白血病に次いで化学療法が有効ながんです。
3.免疫療法