鉄欠乏

鉄は、血色素(ヘモグロビン)の材料以外に様々な酵素の材料になります。例えば、生体異物の解毒に関与する酵素(チトクロームP450)、エネルギー生産回路・電子伝達系の構成酵素、活性酸素消去酵素などです。一般に鉄欠乏による貧血は広く認知されていますが、鉄欠乏による症状には、原因不明の頭痛やめまい、口腔から大腸まで消化管全体にわたる粘膜萎縮、全身倦怠感、易興奮性や集中力低下・うつ等の精神症状にいたるまで、多岐多彩な症状があります。

鉄の吸収と貯蔵
食物中に含まれる鉄は1日10〜20mgで、そのうち約10%にあたる1mgが腸管から吸収されます。また、消化管や汗、尿中に排泄される鉄も1日約 1mgで、収支のバランスがとれています。ところが生理によって失われる鉄は約30mgで、女性に鉄欠乏が起こりやすいのはこのためです。植物性食品の全ては非ヘム鉄(無機鉄)で、動物性食品に含まれるヘム鉄(有機鉄)が食事中に占める割合は約5%程度ですが、ヘム鉄は吸収率が高いため全吸収鉄の約30% を占め栄養学的には重要です。食物中の難溶性無機鉄(Fe3+)は胃酸によって吸収されやすい可溶性の無機鉄(Fe2+)になり、十二指腸・空腸から吸収され、粘膜細胞内にフェリチンとして貯蔵されます。胃酸の分泌が減少した萎縮胃や制酸剤を使用している方では鉄吸収が悪くなります。また、ビタミンC存在下でFe3+はFe2+へ変換され易く、鉄吸収は約2倍〜6倍に増えます。貯蔵鉄は必要に応じて血中に分泌され、運搬鉄(トランスフェリン)と結合して各組織に運ばれます。

臨床検査データと鉄欠乏の治療
ヘモグロビンの鉄は体内総鉄量の約70%を占め、男女とも13g/dl以上が望ましい数値です。ただ鉄欠乏の評価には、血清鉄やトランスフェリン (TIBC)、血清フェリチンの数値が重要で、特に血清フェリチン値を測定する施設は少ないのが現状です。血清フェリチン値は男性では100μg/ml以上の方が多いのですが、女性では10μg/ml以下の方も少なくありません。目標値は、50μg/ml程度です。治療には鉄剤を用いますが、全ての鉄剤は非ヘム鉄で、Fe3+はFe2+へと変換される際に胃壁を酸化して不快感を与えます。ビタミンCの同時摂取をお勧めします。ヘム鉄は有用ですが、高価でサプリメントとして利用されています。ヘム鉄の1日の摂取目標は10〜20mgです。鉄剤の静脈内注射は肝臓などへの鉄沈着を起こす危険性があるため、出来る限り経口摂取をお勧めします。

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