甲状腺腫瘍・甲状腺がん

甲状腺の腫瘍(しこり)について

甲状腺の腫瘍は、いずれも20歳代から50歳代の女性に多く、しこりがあるだけで、ほかには何も自覚症状がないのが特徴です。
ただ、自分でも気づかずにいる方が大半で、頸動脈エコーや乳房エコーの際偶然見つかる方が非常に多くおられます。
実際、当クリニックで見つかった全てのがんで、「乳がん」に次いで多いのが「甲状腺がん」です。

甲状腺のしこりは、めったに機能異常を伴わず、悪性であっても多くは根治が期待できます。
甲状腺のはれ方には、バセドウ病や橋本病などのように甲状腺全体がはれる「びまん性甲状腺腫」と、甲状腺が部分的にしこりのようにはれる「結節性甲状腺腫」などがあります。
一番注意しなければならないのは、がんなどの悪性腫瘍です。したがって検査では、良性か悪性かを鑑別することが重要です。しかし、仮にがんであったとしても、甲状腺のがんはほとんどが非常にたちがよいといわれ、一般のがんと比べて進行が遅く、比較的治しやすいがんです。

当クリニックで、甲状腺がん・甲状腺腫瘍が見つかった場合、専門病院を紹介しています。
紹介先は患者さんの希望を優先していますが、神戸の「隈病院」への紹介が一番多いのが現在の状況です。

 

甲状腺の腫瘍は、次の3つに分類されています

良性腫瘍:腺腫 
腺腫は、甲状腺の左右どちらか一方にしこりがひとつだけできるのが特徴です。
男女比は1対10くらいで、女性に多い病気です。
大きさは、触るとやっとわかる程度のものから、下が向けなくなるほど大きなものまであります。しかしどんなに大きくなっても、呼吸が苦しくなったり、ものが飲み込みにくくなるようなことはほとんどありません。
ごくまれに、しこりが甲状腺ホルモンを過剰に生産し、バセドウ病のように甲状腺機能亢進症の症状を現すことがあります。

腺腫と似たしこりを作る腺腫様甲状腺腫
典型的な腺腫様甲状腺腫では、左右の甲状腺に大小さまざまな大きさのしこりがいくつかできます。このしこりがたくさんできると、外見上はくび全体が大きくはれたように見えます。
腺腫に比べると大きなものが多く、なかには鎖骨より下の胸の方まで入り込むもの(縦隔内甲状腺腫)もあります。しかしこの場合でも、呼吸や食事の通過にはほとんど影響ありません。
この病気は本来良性ですが、時には一部にがんが含まれていることがあります。したがって、きちんと鑑別診断を受けることが大切です。また日本では少ないですが、長い間放置すると甲状腺機能が亢進することもあります。

悪性腫瘍
腫甲状腺のしこりのうち、約20%はがんです。
女性の方が、男性よりも約5倍ほど多くかかります。
さいわい他のがんに比べると、甲状腺のがんは進行が遅く、治りやすいものが多いのが大きな特徴です。
甲状腺がんには、乳頭がん、濾胞がん、低分化がん、未分化がん、髄様がん、悪性リンパ腫、の6つがあります。

 

甲状腺がんの種類と特徴

(1) 乳頭がん
甲状腺がんの8割以上を占めるのが「乳頭がん」という、進行が遅くおとなしいがんです。このがんは、早い時期にはただしこりがあるだけで、進行もきわめてゆっくりで、気づかずにいる方が大半です。
乳頭がんは、遠くの臓器に転移することは少ないのですが、割合早い時期から甲状腺周囲のリンパ節に転移することが少なくないため、なかには、くびの側面にあるリンパ節がはれて異常に気づく人もいます。
しかしリンパ節に転移しても、そこでの成長もゆっくりとしているので、この時点で治療をしてもすっかり治ることが非常に多いのが特徴です。
乳頭がんの10年生存率は、90%を越えています。がんとしては、極めてよく治るがんといっていいでしょう。
*普通は、手術後5年で治ったと判断されます。

(2) 濾胞がん
次に多いのは「濾胞がん」で、甲状腺がんの8%ほどを占めています。
これもおとなしいがんで、しこりがあるだけでほかには異常がない場合がほとんどです。ただしこのがんは、リンパ節への転移が少ないかわりに、肺や骨など遠いところに転移することがあります。
しかし、これも進行が遅く、早期に治療をすれば、治る率はかなり高いがんです。
10年生存率は、80%程度です。

(3) 低分化がん
甲状腺乳頭がんや濾胞がんのなかで、組織学的に低分化成分が含まれるがんは、低分化がんと呼ばれています。
通常の乳頭がんや濾胞がんに比べ進行がやや早いため、悪性度は乳頭がんや濾胞がんより少し高く、未分化がんよりは低い位置づけになります。

(4) 髄様がん
甲状腺がん全体の1~2%ほどを占める特殊ながんです。乳頭がんや濾胞がんのように、甲状腺ホルモンを作り出す濾胞細胞からできるがんではなく、カルシトニンと言う血液中のカルシウムを下げるホルモンを作り出す傍濾胞細胞(C細胞)から発生するがんです。
髄様がんのうち、3分の1は家族性(遺伝性)に発生します。
このため、遺伝性の髄様がんは遺伝子検査により、がんが発生する遺伝子があるかどうかを診断できるようになっています。
また髄様がんのなかには、副腎の褐色細胞腫や副甲状腺機能亢進症などほかの内分泌腺の病気を合併するものがあり、多発性内分泌腺腫瘍症(MEN)と呼ばれています。

(5) 未分化がん
未分化がんは非常に未熟な細胞であるため、発育が急速で悪性度の高いがんです。高齢者に多く、若い人にはみられません。
また、未分化がんは甲状腺がんの2%くらいに過ぎません。
甲状腺がんはどれも女性に多くみられ、男性対女性の比率は、乳頭がん、濾胞がんでは1対6です。しかし未分化がんでは1対2と、男女の差が小さくなります。

(6) 悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は、全身のあらゆるリンパ組織を起源に起こってきます。甲状腺にはもともとリンパ組織はありませんが、リンパ球が浸潤(周囲の組織を侵していくこと)するような橋本病では、悪性リンパ腫を発症することがあります。
甲状腺原発の悪性リンパ腫は、悪性リンパ腫全体の約1~2%を占め、甲状腺原発悪性腫瘍の2~5%を占めます。
甲状腺の悪性リンパ腫は橋本病を基盤として起こることが多く、悪性リンパ腫の患者のなかで約80%が橋本病を合併しており、また男女比が1:4.3と、女性に多くみられます。
この病気の場合、急に甲状腺が大きくなったり、腫瘍のようにはれてくるのがもっとも特徴的な症状です。
また大きくなってくると、飲みづらい、声がれ、呼吸が苦しい、などの症状が出ることがあります。

 

甲状腺がんの検査方法

検査方法としては、超音波検査(エコー)、細胞診(エコー下穿刺吸引細胞診 )でこの病気を疑い、確定診断のためには甲状腺試験切除(生検)を行います。治療法は、悪性リンパ腫のなかのさらに細かい分類や、病気の広がりによって決まりますが、化学療法、放射線治療などを行います。
甲状腺がんの5年生存率は90%以上といわれます。

 

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