その 7 「GOOD LUCK」

今年もここ数年の恒例となった異常に暑い夏が終わりを告げた。一昨年はフランスで異常な暑さの犠牲者がでたことは記憶に新しい。この時代の終焉を警告しているようで、なんとはなく不安を感じるのは私だけだろうか。ようやく心静かな秋の気配を身近に感じ、ほっと一息というところである。

奈良の秋は、寂れた秋である。京都のような雅はないが、私は奈良の秋が好きだ。白壁の秋篠寺、萩が美しい白豪寺、参道が素晴らしい浄瑠璃寺、そしてなん といっても東大寺の裏参道を戒壇院から2月堂へ辿ると奈良の秋は最高潮である。十津川生まれの私は、小学校3年であやめ池小学校へ転校し、以来中学校高校と奈良公園で過ごし、医師としても12年余りを奈良市内の済生会奈良病院産婦人科に勤務している。いくつもの秋が過ぎ、何度季節を繰り返しただろう。

先日かつて勤務医をした済生会奈良病院で共に働いた医師と外来看護婦が集まって同窓会を開き、私も久しぶりに参加させていただいた。当時産婦人科の責任者として勤務し、その間大学から若い先生方が1-2年交代で医者になって最初の出向地としておとずれ、医師人生の一番大切な時期に私流の産婦人科臨床につき合ってもらったのが昨日の事のようである。今ではそれぞれ責任ある立場で、中堅の産婦人科医師としての活躍を聞くとなんとも言えず嬉しい。こんな喜びを感じることができるのは、世の中広しといえども、ごく限られた少数と密かな満足をおぼえる。

同窓会にあたって、みんなに何かプレゼントがしたいと思い、いろいろと無い智恵をめぐらせた末、一冊の本を選んだ。『GOOD LUCK』というタイトルで、世界50カ国で出版されベストセラーの仲間入りをしたファンタジー ? である。一度は手にしていただきたい一冊で、人生の幸運をつかむチャンスは誰にも均等に与えられており、自らその幸運のチャンスをつかむ努力をしている者だけが本当の幸運を手にできる、というごく当たり前のストーリーである。「自分の道を切り開くのは自分自身」は私の人生における座右の銘であり、この本をプレゼントに選んだ最大の理由である。
その会では、最初に挨拶をさせていただく光栄にあずかり、乾杯の発声の代わりに「GOOD LUCK」を合言葉として昔話に興じた。久しぶりに心から楽しむことができる、とても贅沢な時間が流れた。それぞれの人生では、全ての人がみな主役である。前途有望な若者たち、人生という長い道の途中でたまたま出 会い伴走した短い時間。若さが持つ素晴らしいエネルギーを身近に感じ、みんながそれぞれの舞台で素晴らしい主役を演じてくれることを遠く近く願いつつ、感 謝を込めてひとり心の中でもう一度乾杯。
「GOOD LUCK」

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